Shantell Martin

エシカルコンビニより、イギリス生まれのビジュアルアーティスト Shantell Martin(シャンテル ・マーティン)をご紹介いたします。

シャンテル・マーティンは、モノトーンのラインを使った壁画やイラストが世界的に認知され、オーディエンスを前にライブペイントも多く行うアーティストです。

About Artist - Shantell Martin

WHO ARE YOU?

シャンテル・マーティンの作品について、あるいは彼女自身について語るとき、切っても切り離せないのが「自分は何者なのか?」 「自分は今、自分らしくあるだろうか?」という問いかけです。

彼女は、ペンは自身にとって、懐中電灯のようなものであると言います。軽快なラインを描くそれは、彼女の指先だけでなく、心をも導いてきました。

ロンドン南東部の公営住宅団地で、6人きょうだいの一番上として育ったシャンテルは、自分を「アウトサイダー(よそ者)」であったと表現しています。 金髪と青い目の家族、ワーキングクラスの白人ばかりの住環境。ナイジェリア人ハーフの自分が、どうすればこのあからさまな人種差別と同性愛嫌悪のある暗い環境から抜け出せるのか、 と考えた末に出会ったのが「描く」ということです。

ポールスミスやアレキサンダー・マックイーンらの出身校としても知られるロンドンの由緒正しいアートスクール、セントラル・セント・マーティンズでグラフィックデザインを学び首席で卒業した彼女は、 人種差別や階級差別を強く感じざるを負えなかった英国を飛び出し、日本に移り住みます。

彼女は日本を「異質な場所で、私がどこから来たか誰も知らないし、気にもしない、でも、自分にとって存在しなかった未来を想像できる場所でもあった」と語ります。
ノートに覆いかぶさるように描き込む形だった彼女の世界は、日本での友人との出会いを経て、紙の上を飛び越えていきます。
ミュージシャンの演奏に合わせてドローイングを行う VJ としても経験を積み、やがて NY へ移り住んだシャンテルは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)プライベートイベント でのライブドローイングを担当、美術館やギャラリーでの展示の他、グローバル企業や、有名ブランドとのコラボレーション、 世界最大のアートフェア ART BASEL にてラッパーのKendrick Lamar とパフォーマンスなど、数多くの大規模なプロジェクトに取り組むアーティストとなりました。
ニューヨークタイムズ、VOGUE、The New Yorker、TED などをはじめとするメディアにも広く取り上げられ、世界各地の人々の心にまでメッセージを届けています。

“「WHO ARE YOU(あなたは誰ですか)」と書いた場合、最初の 3 文字は WAY となります。 だから、本質的には、人生とはあなた自身の「WAY=道」を見つけようとすることです。 「あなたは誰ですか」という問いは、最終的には「あなたはあなたです」に変わりました。 それは一つの着地点です。 その着地点に着くと、「あなたはあなたです」は「あなたはあなたですか?」に変わります。
なぜならあなたは自分が誰であるかを理解したとき、もう一度最初から、全く別の方法でそれを やり直さなければならないからです。
あなたは、「あなたは誰ですか?」または「あなたはどうやってあなたの道を見いだして いるのですか」とも言い換えられる最初の質問をする時、 今までとは違う、新しくユニークな方法で、自らに問うているのです。”

-−シャンテル・マーティン(2020 年 hpgrp GALLERY TOKYO での個展によせて)

向き合うとき、大きく分けて 2 通りの見方があると言われることがあります。
それは、「物理的側面」と「精神的側面」です。「物理的側面」からシャンテル・マーティンの作品を見るとき、それはマーカーでキャンバスに描かれたタギング風の軽快な ドローイングであり、モノクロを基調としたシンプルな色使いと、線・人物・言葉で生み出されるアイコニックな描写が印象的であると言えるでしょう
「精神的側面」から作品を見るとき、作品に「何が描かれているのか」「彼女の表現したいことはなんなのか」と、自由に思考を巡らせることができます。 これは、芸術学や美術・デザインの歴史、現代アートの用語がわからなくてもアートを十分に楽しめる対峙の仕方です。

もちろん、自身の見聞を広げることは世界を広げることかもしれません。しかし、知らないことを恥じて知ろうとしなかったり、難しいと決めつけたり、そんなことはもったいないと、 私たちは思うのです。

そんな「食わず嫌い的」アートへの先入観を無くすべく、私たちは「精神的側面」あるいは「エシカル的側面」と言えるかもしれないアートの楽しみ方をご提案いたします。